歌が上手い人は沢山いまして。
プロでない方でも、上手い人が本当に多い世界です。
そんな中、「プロなのに下手だな」みたいなことを言われてるミュージシャンもボチボチいます。
プロなのに下手、ちょいと考えてみたいなと。
ぶっちゃけた話、プロならば、上手いだけではなかなか惹かれません。
歌のテクニックが沢山使える人も多いのかもしれませんが、テクニックを自在に使えるから感動するというわけでもないと言いますか。
歌の上手さが不要という話ではないですが、下手でも下手なままプロをやってます。
プロの定義をしっかりすると、「それでお金を稼げる」人は全員プロです。
上手いか下手かではなく、お金を稼げるかどうかです。それで食っていけるかどうか。
もう少し正確に書けば「お金を払う価値がある」と周りが考えるならばプロ。
例え話をすれば、そこらの高校球児よりも足が遅かったり、守備が下手だったり、ボールのコントロールが悪いプロ野球選手はいます。
それでもプロなんですから、野球の上手さが不要という話ではないですが、高校球児より下手でもそのままプロにはなっていますので、それと同じです。
高校球児が「俺の方が足が速い」「俺の方がコントロールが良い」「あんな守備の下手な奴がプロ野球選手かよ!」と言ったとして、事実そうだとしても、それでもなおその選手はプロとして金を払ってでも手に入れたいと球団が求めた選手です。
プロとは「金を払う意味を感じる人」と定義すれば、上手いかどうかは「上手さを評価する人が金を払う価値がある人」ではありますが、上手さに金を払う価値を感じてもらえなければ上手くてもプロにはなれない、ということでしょうか。
下手でも、金を払う価値があると思ってもらえればプロです。
ミュージシャンも同じく。
「がなり」だとか「ミックスボイス」だとか「ウィスパーボイス」だとか「フェイク」だとか「しゃくり」だとか「低音も安定してて、高い声が出る」「音抜けが」とか、声の出し方やら音域やら、歌の上手さを定義づける要素は様々ありまして、まぁそれはそれで良いんですけども。
そういうものを持たないミュージシャンもみな「それで食ってるならプロ」という感じでしょうか。
中でも、個人的に大切だなと思うのは、声質と歌い回しです。
言うならば、「モノマネしたい」と思えるような特徴を持ってるかどうか。
例えば、CHAGE&ASKAのASKAの歌なんて、聞いた瞬間にASKAじゃないですか。あのねっとりとした歌い回しと声質。
LUNA SEAの河村隆一とか、聞いた瞬間に河村隆一。
井上陽水も、玉置浩二も、宇多田ヒカルも、サザンも、B'zも、GLAYも、ミスチルも、BUMP OF CHICKENも、JUDY AND MARYも、サカナクションも、Mrs.GREEN APPLEも、Adoも。
がなろうがファルセットだろうが高音だろうと低音だろうと、何をしようが、関係なく。
上手い下手は色々あれども。
なんせあの声質と歌い回しにこそ意味がある。
外タレなら、ボンジョヴィとか、マイケルジャクソンとか、スティーヴィーワンダーとか。
テクニックはもちろん素晴らしいですが、そうではなくて、個性という点において、です。
マイケルジャクソンなんて、あんな変な歌い方してるミュージシャン、他には僕は見たことないです。
変ですよね、あの歌い方。
「アッ!ダッ!パゥ!ヒッ!」みたいなのがそこら中に入る。バラードですら。
普通の歌い方も出来る方ですけど、なんか変な歌い方ですよ。
ボイトレの先生が、「そこで、ダッ!て入れるのが歌の上手い人なんです!はい、ダッ!パゥ!もっと!歌が上手いのはダッ!なんですよ!さぁ!」とか言わないですよね。
変です、あれ。
歌の学校で、絶対に教えない歌い方です。
ダサいって言ってるんじゃないですよ、カッコいいんですよ。
金を払う価値のある歌です。
だけど、ボンジョヴィが
「イッツマーイラーイフ!ッダ!イッツナウオーネーヴァー!ッヒ!ッア!」
って歌ったら、そりゃマイケルジャクソンのモノマネじゃないですか。
それはそれでカッコよくなるだろうけど、そりゃもうお金払ってくれないかもしれません。
そんなのアマチュアなんですよ、上手かったとしても。上手いだけの人ではアマチュアです。お金払う価値がないから。
それならマイケルジャクソンにお金払って聞けば良いんだから。
このような影響力のあるミュージシャンの登場後には、そのような歌い方を真似るプロのミュージシャンが現れてきます。
BUMPなんかは、出てきた後によく似た歌い方をするミュージシャンが沢山出てきました。
少し投げやりで、放り投げるような歌い方をするボーカル。
ミスチルの後には、少し喉を締めて吐息交じりの鼻にかかるような甘い歌い方をするミュージシャンが。
Adoの後には、「ヒッ!」と息を吸う音を大きく入れたり、攻撃的な発音をする人が。
いずれも「あぁ、影響凄いんだな」と思わせてくれます。
しかしモノマネのうちは埋もれます。お金を払ってもらえません。
オリジナルじゃないから。
どのプロミュージシャンも、誰かが真似をしたくなるような歌声の「オリジナル」です。
カラオケが上手いとか、テクニックがあるとか、それだけの歌い手ならばプロミュージシャンじゃないというか、「DNAの持つ個別の歌声」が、プロミュージシャンの魅力というか。
そのオリジナルを作ったことにこそ、プロのプロたる魅力がある気がします。
「新しい歌唱様式の発明」という感じ。
歌が上手いからプロなのではなく、そこに「お金を払う価値」があるから、プロなのだろうなと。
マライアキャリーのホイッスルボイスにお金を払い、マイケルジャクソンの「パゥ」にお金を払い、桑田佳祐のあの歌い方にお金を払う。歌の上手さにお金を払ってる訳ではなく。
もちろん曲や歌詞やパフォーマンスありますが、あくまでボーカルを切り口にした時に、単純に「歌の上手さにお金を払う世界」ではないというか。
プロなのに下手、まぁそういうのもありますよね、プロとはそういうものですから、という感じ。
「あの歌手は歌が下手だ、それでプロなのか?」
みたいな意見がありますが、はいもうプロですよね、だって金を稼げる歌声なんだから。
と思うわけです。
「さすがプロミュージシャン、歌が上手いよね!」ではないというか。
歌が上手い人もプロにはなりますけどね。
「なんか下手かもしれんが、カッケー。というかもしかしたらこれを歌の上手さと言うのかもしれん。」みたいな変な勘違い(?)をさせるほどの言語化できない魅力が、プロのミュージシャンにはあるよね。
なんて思ったりします。