聞かれましたか、買われましたか。
Mrs. Green Appleのニューアルバム。
こちとら、Mrs.Green Appleのファンではございません。
全くもって。
「おぉ、なんか流行ってるよね」
「ライラックの人でしょ。他の歌も聞いたことはあるよ。夏が始まった合図がしてるやつとか」
というわたくしでございまして。
そんなわたくしですけども、まぁ流行りに乗って彼等のニューアルバムを聴いてみたわけですけども。
えー。
食らいました。クソほどに食らいました。
一言で表現するなら、このアルバムは「原液」という感じです。
「打ちのめされてしまった」みたいな感じでした。
いやもう、こういうのは語らない方が良いのかもしれませんが、というか、がっつり原液に打ちのめされてしまいまして、うまく語れませんが。
感動したとか、なんかそんなんじゃなかったんですよね。
感動しないということではありません。
これでもかも感情を掻き立てられたんですが、「感動しました!」という表現は適切ではなくて。
打ちのめされてしまった。
アルバムの出来が良い(良いという表現もなんか違うんですが)んだと思います。
1つ1つの曲はそれで素晴らしいんですけども、このアルバムは「通して聞く」と、言語化できない何かに打ちのめされる感じがします。
ちなみに、次の曲がとても聞きたくなる構成になってるので、意図せず次が聞きたくなりました。
それは「良い曲だから次も!」という感じではなく、「なにこれ、え?このままいくの?どうするつもり?」という感覚に近い。
なんとなく街中で流れてくる音楽を聞き、楽しそうに演奏しているメンバーの映像から、耳馴染みも良くて楽しいバンドなのかなというイメージが強かったんですけどね。
そんなんじゃないですね、なんか。
バンドとしては、一見ポップにパッケージされていますが、ブッ刺してくるパンクに近い音楽というか。
かといってぶっ飛んでいるわけでもなく、とことん普通です。
強烈にブッ刺してくるくせに、あまりにも普通過ぎる。
異常なぶっ飛びパンク精神ではありません。
酒、ドラッグ、女、ギャンブル、殺し、暴力、そんなものとは無縁の、普通の常識人が常識の範囲内でブッ刺してくるわけなのです。
普通の範疇にあり、予測の外にはいない。ドロドロした闇深さとかも、ごくありふれた常識の範囲内でおさまります。「そこまでいったら異常というか、むしろ芸術だよ、というか理解が及ばないよ、さすがに」というところまでは行きません。
なのですが、その範囲の中では思う存分暴れている。
「たいした暴れ方じゃない」んだけど、大きな迷惑にならない程度の中では最大限に暴れてる。
たいして考え抜けてるわけでもないけど、煮詰まってる。
とにかく普通の人が普通にややこしい、しかし普通。
それを大量に突き刺してくるので、一つ一つは普通なのにブッ刺さってくる。
何と言えば的確なのかよくわかりませんが、この混沌を、原液のまんま出してきてる。
創作物ってのは、どこか原液を加工するものだと思うんですけど、このアルバムは原液のままなのである、みたいな感じです。
なんかもう語彙力が足りませんが、凄い、という感じですね。
凄い、というのも、褒め言葉の意味の「凄い」と、皮肉を込めての「凄い」が同レベルでふつふつと湧く感覚です。
いやもう、どの曲が、とかじゃないんですよ。
この歌詞がとか、このフレーズがとか、そんなんじゃないんですよ。
そんな細々したことを言ってるのではなく。
なんかね、凄かったです。
しかも、捨て曲ないんかい!という感じでして。
「まぁアルバムだもんね、そーいう歌もあるよね」みたいなのがなく。
ひたすら勝負かけまくってる歌で構成されていて、隙間なく詰まりまくってる。
僕好みの音楽なのかと言われたら、そうではありません。
聞いてファンになったわけでもないんですよ。
僕の好みはツェッペリンやらゼブラヘッドやらニルヴァーナやら、日本ならBUMP OF CHICKENとかLUNA SEAとかエルレガーデンみたいなロックなので、少しジャンルも違う。
ですけどもね、なんかね、エグいですよ。
Mrs.Green Apple。存在が。
普通過ぎる、変人でもない、ただの普通のポップスに原液のまま詰め込みまくってブッ刺してくる、なんかそんな感じです。
歌詞もオモロかったです、ほんと。
ボーカルの方の「うまく言語化できない葛藤」が、「うまく言語化できないまま」歌詞になってる感じでしょうか。
色んな葛藤が、解決もできず、諦めることもできず、現状を受け入れることも出来ず、答えを導くこともできず、着地点を見つけることも出来ず、未消化のままで、加工されないまんま、原液が生々しく晒されてる感じでしょうか。
答えがわからないけど、「他人のことや心の中や世の中のことを一人で考えてみた、みんな、こうなんじゃない?」と勝手に妄想したような世界観の歌詞なんですが、なんというかその想像は絶妙に外していると同時に、ミットに収まるファウルチップ程度にカスっている。チクッと痛みを感じる程度に痛く、同時に「盛大に外れとるぞ」みたいな感覚がある。
かつ、何やら弱い毒が仕込まれてる。死にもしないし、消毒しなくてもすぐに治癒出来る弱い毒。まさに原液で、濃縮して強い毒性を持ってはいない。薬の元は毒であることもありますが、毒素を薄めて薬になってるわけでもない。原液の弱い毒。しかし、詰め込みまくってるがゆえに一度には消化しきれない。弱毒がちょっとかすって「外れとるぞ」と言ってるうちに、ドカドカと多量の毒素がくる。原液のままで。
そういう意味では、歌詞は、寄り添ってもくれないし、助けてもくれない、背中を押してもくれない。基本的に、聞き手に何もしてくれません。
この無加工の原液は、互いに矛盾し、対立すると同時に、混ざり合い、共存しています。
アルバムを通して。
その原液のままゆえの生々しい感じが、大挙して突撃してくるように、ブッ刺してくる感じでした。
そして、原液ゆえに、あまりにも普通なのです。
普通すぎる。
濃縮もせず薄めもせず、あまりにもな普通が、普通なまま、生々しく晒されている。
普通、というのは、ファンタジックでもなく詩的でもなく、あくまで「そこそこ普通に生活出来ている」人間臭い範疇に収まるという感じです。
表現も、暗喩とかがなくて、説明が説明のまま、そのまま。
例えば、「希望が失われて絶望して泣き叫ぶ自分の声に耳がつんざかれる」ような場面があったとして「光が弾けて 咆哮が突き刺さる」みたいな感じの表現をせず、そのまんまの言葉がそのまんま羅列されている歌詞です。そのまんまなんですよ。
ブルーハーツなんかは、そのまんまの言葉を詩的に並べますが、詩的ではなく、そのまんま。
その希望も「僕の将来の夢は警察官です」「夢はミュージシャンです」「政治家です」みたいな一般人の普通の常識の範囲内にあり、絶望も「あぁ自分なんていなくて良いんじゃないか」みたいな常識の範囲内で、普通です。
「世界の王になる」みたいなぶっ飛んだ希望ではないし、震災のような突然の災害で愛する人を失った人ほどの絶望もない。連れ去られ戦場に送り込まれる少年兵のようなどうしようもない境遇にもいない。自分でリストカットしてしまうような追い込まれ方でもなく。
ダメって話をしてるんじゃなくて、原液のまんまってことです。
多くのファンがつくゆえんは、それが大衆向けになるからなのだと思いますが、原液過ぎる原液だなと。潔いというのかなんなのか分かりませんが、とにかく歌詞もまた原液です。
キーボードとギターがその原液を包み込むように、同時にその原液と反発するように煌びやかで重たく、ポップでアイロニーでして。
何このバンド、みたいな何やら不吉で、思い切り軽やかで、この演奏もまた原液のようなのでして。
演奏もまた原液なんですけども、これは矛盾するような表現になりますが、異常に作り込みまくっていまして、ギチギチと突き詰められた音が鳴っています。
作り込みまくってるのに荒々しい原液なんですよ。ギチギチに突き詰められた作り込みから原液が染み出してくるというか。
時に、曲の流れや、互いの楽器のリズムやフレーズを無視して、勝手気ままにそれぞれに演奏している編曲なのですけれども、まぁもうこのアルバムだからもうこうだよねと強引に納得させられるような変な力を持っていて、というか意図的に持たせたのだろうと思うのですが、アルバム通して聴くと、えぐい体験が待っていた、という感じでした。
で。このアルバムのタイトルは「POPS」。大衆音楽です。つまり普通を普通のままに。
なるほど、原液なわけだ、となるんですけれども。
それでも過去のポップスは、原液に何か加工を加えて飾っていたわけで、いやこの無加工の音楽はポップスなのか?とも思わされる。
なんせ、混乱させられる。
すんません、なんか例え話をしすぎて、この記事が混乱記事ですわな。すんません。
いやほんと言語化難しいですよこのアルバム。
音楽評論家がどう受け取るのかは知りませんが。
僕自身が作詞作曲を趣味にしていて、色々と今でも作ったりしますが。
このアルバムは、結構あれじゃないですか、音楽界に影響がありそうな気がしたりします。色んな意味で。
皮肉抜きで、良いアルバムです。ほんと。
みなさま聴きましたでしょうか?
ファンじゃなくても楽しめるアルバムじゃないかなーなんて思ったりします、ほんと。